2021-04-08T01:16:42Z ルアーとは|ルアーの定義を専門家が解説
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ルアーとは|ルアーの定義を専門家が解説

釣りに使用されるニセモノの餌としてよく知られる「ルアー」。しかし、「ルアーとは何であるか」「ルアーの定義とはなにか」、それらについての説明は各個人や本などによって様々。しっかりとした説明がされていることはなかなかありません。

そこで本稿では、そんな「ルアーとは何か」について、釣りやルアーの研究も生業とする者として詳しく解説したいと思います。深い話へと入る前に、まずは「ルアーとはなんであるか」ということから話していきましょう。

1.ルアーとは

簡潔に言えば、釣りにおけるルアーとは、プラスティックや金属・ゴムといった人工素材、または木材や動物の毛・羽毛といった天然素材などで作られた人工的なオトリの事であり、釣りに使用される人工餌の一種です。その種類は多種多様で、魚たちが実際に食物とする小魚や虫・ミミズといった実在する生き物に色やカタチ、あるいは動きなどを似せてつくらているものから、自然の生き物などを模していない無機質なものまで、様々なものが存在します。

このように、ルアーというものには、生物的であるものも、生物的でないものも全て含まれます。

その一方で、釣りに使用される人工餌には、魚たちが実際に食物としている天然の餌などを加工したものもありますが、それらはより天然の餌に近いとして、ルアーと呼ばれる事は基本的にありません。つまり厳密に言うならば、釣りにおけるルアーとは、「生物的であるか否かは問わず、魚たちが食している天然の餌、もしくはそれに相当する素材を使っていない人工的なオトリ、人工餌の一種の事」であると言えます。

2.英米におけるルアーの定義

ルアーを使った釣りの伝来元である英米におけるルアーの定義は以下のようになっています。

  1. 「a decoy for attracting animals to capture: such as a: artificial bait used for catching fish.{魚を捕らえるために使用される人工的な餌といった、動物を引きつけて捕らえるためのオトリ}(Merriam Webster)」
  2. 「A decoy used in catching animals, especially an artificial bait used in catching fish.{動物を捕まえるためのオトリ、特に魚を捕らえるための人工的な餌}(The Free Disctionally)」
  3. 「an artificial insect or other small animal that is put on the end of a fishing line to attract fish.{魚を引きつけるために釣り糸の先につける人工的な虫やその他小動物}(Cambridge dictionary)

これらは順に、アメリカの有名辞書、オンラインの英辞書、イギリスの有名大学辞書から引用したものですが、このように伝来元である英米においても、釣りにおけるルアーとは、主に魚を引きつけるための人工的なオトリ・人工餌を指すものとなっている傾向にあります。

ただし、3番のイギリスはケンブリッジ大学の辞書では、「人工的な虫やその他小動物」と限定されていますが、これに関しては、イギリスがルアーの中でもフライと呼ばれる主に虫に似せて作られたものを使うフライフィッシングが盛んな国である事、そしてアメリカや日本に比べるとルアーの開発や発展が活発でない事が一因となって、より限定的な解釈がなされているものと思われます。

3.「ルアーとは擬似餌の一種である」という認識は間違い

ここで一つ問題となってくるのが、日本でよく言われる「ルアーとは擬似餌の一種である」という認識です。先にも述べた通り、ルアーとは実在の生き物に似せてあるものも、そうでないものも含めた人工的なオトリの事を言います。

しかし擬似餌とは本来、「魚などが食べる生き餌に色や形を似せて作ったもの」と大辞林でも定義されているように、実在する生き物を何らかのかたちで模して作られているものです。この事は「擬似」という文字にも表れており、擬似という言葉には「本物によく似ていてまぎらわしいこと。また、そのもの」という意味があります。(コトバンク)

つまり、擬似餌が本物の餌に似せてつくられているものであり、ルアーとはそれら本物の餌に似せたものもそうでないものも含む以上は、ルアーが擬似餌の一種なのではなく、擬似餌がルアーの一種であると認識する方がより正しいという事です。

4.恐らくフライもルアーの一種であるという認識がより正しい

現在見られるルアーフィッシングおよびフライフィッシングという釣りのスタイルや、そこで使用される道具の多くが、元来日本人にとっては定義の理解まで及びにくい外来性のものである上、日本で言われるルアーフィッシングとフライフィッシングでは使用する釣り具が違うこともあって、日本国内では「フライとルアーは異なるもの」と分けて分類されてきた傾向があり、それは今も続いています。

しかしながら、ルアーの伝来元である米英では、フライもルアーの一種であると認識されている傾向があります。この事は先のケンブリッジ大学の辞書の引用文にも垣間見えましたが、米ウィキペディアのルアーに関するページ「fishing lure」内でもフライがルアーの一種であると扱われていたり、同じくウィキペディアのフライに関するページ「Artificial fly」内において、「フライとはルアーの一種である」と説明されていたりと、英語圏の各オンライン辞書による定義説明やルアーの歴史に関する資料、一般のウェブサイトなど、様々な資料上でフライがルアーの一種であると認識されている様子が確認できます。

以下は代表的な例。

  • 「An artificial fly or fly lure is a type of fishing lure. {人工的なフライ、またはフライルアーとは、フィッシングルアーの一種である} - Wikipedia
  • 「fly2 3. Angling. a fishhook dressed with hair, feathers, silk, tinsel, etc., so as to resemble an insect or small fish, for use as a lure or bait. {餌やルアーとして使用する、虫や小魚に似せた、毛髪・羽・絹・ティンセルなどをまとった釣り針の事。} - Dictionary.com
  • Fishing lure - Wikipedia
  • Types of Fishing Lures - Fishingnoob.com

なお、米英においてもルアーとフライが異なるものか否かについての論争は見られますが、定義や知識に長けている人ほど「フライはルアーの一種」と認識している傾向にあります。

そもそも一部の釣り人がフライとルアーを別のものとしている要因は、それらを使用するための釣り具が違うことにあると言えます。つまり、使用する釣り具が元々同じであったのなら、同じ人工餌であるとして、それらを別々のものとして認識していなかった可能性が非常に高いと言えるわけです。

したがって、ルアーの定義と伝来元の米英の認識も踏まえて言えば、フライもルアーの一種であると考えた方がより正しいと言えるでしょう。

5.誤った知識はトラブルの元

今回は「ルアーとは何か」「ルアーの定義」について詳しく解説してみましたが、いかがでしたでしょうか。日本のみならず、人間というものは外来性のものに関して定義を深く考えず、誤解したまま浸透させてしまう事が多々あります。そして一度誤った知識が広く浸透してしまうと修正は難しく、派生した分野の定義づけが必要以上の複雑化や困難化、あるいは矛盾を招いたり、論争という対人間の争いを引き起こしたりと、様々な問題を引き起こします。事によってはノウハウ習得の障害にもなり得ます。

そういった事を未然に防ぐためにも、普段より正しい定義について深く理解したり、それらを広める事に努めたいものですね。